林経協の提言
● 森林整備地域活動支援交付金について
林野庁林政部長  殿
平成18年8月4日
(社)日本林業経営者協会  会長 速水  亨
日本林業同友会  会長 海瀬亀太
森林整備地域活動支援交付金について

森林整備地域活動支援交付金制度については、林野庁において、この制度の後継対策を探るための検討会を発足させて検討を進めており、去る5月30日に検討会の「中間とりまとめ《が公表されました。林野庁においては、この報告書に沿って制度の見直しを検討するものと思われます。

両会では、検討会発足当時の平成17年12月20日にこの制度の抜本的見直しを申し入れております。また、㈳日本林業経営者協会会長の速水亨が検討会の場で同様の趣旨を申し上げております。

しかしながら、中間とりまとめは、これらの要請が反映されたものとはなっておらず、ここに改めて、これまでの実施状況や要請を踏まえ、森林整備地域活動支援交付金制度を見直していただくよう『中間とりまとめ』の項目に沿って、要望いたします。

1. 項目: Ⅰ 現行制度の効果
1 地域活動の効果
2 森林整備への効果
3 その他の効果
要望:

平成14年度からの実施結果について、森林管理経費等への支援措置としての当初の目的に沿った効果とともに『地域内の結びつきが強まる』などの成果も発揮された施策であるとの検討会の評価は、我々の認識と同じであり、この制度を改善しつつ今後とも継続していただきたい。

2. 項目: Ⅱ 現行の仕組みの評価及び対応方向
2 交付対象者
(2) 評価
(3) 対応方向
要望:

先の要望書でも申し上げているように、市町村は財政負担部分があることや事務量が増大することを理由に、

① 制度に該当しても一部の面積しか協定を結ばない
② 村外所有者とは協定を締結しない
③ 森林施業計画を委託した森林以外は協定の対象としない
といった事例が見受けられる実情にある。

『施業・経営の集約化など交付対象者の取組内容に応じて支援を重点化する』としているが、施業集約化の施策は、行政当局が長年に亘って取り組んできたにもかかわらず、有効に実現できていない課題である。

従って、補助等の優遇措置の適用を受けるための形式的な集約化では効果は期待できないので、単に施業計画を受託するものは除外し、将来にわたって経営そのものの受託が継続実施できる契約を締結するなど、実態を伴う集約化に限定した取り扱いとしていただきたい。

第2に、森林所有者が補助金や交付金を地方自治体に直接請求し、その使途の説明責任を果たして、自己の森林を適切に管理できることが最も望ましいことであり、このことが所有面積の大小を問わず、危機に瀕していることを直視し、経営体と市町村との直接協定の原則を明確にして、これを支援重点化の第1順位におき、第2順位を『実態を伴う集約化』としていただきたい。

第3に、『一定の財政的支援がなければ計画的かつ一体的な施業が十分に行われない森林を支援するという交付金制度の趣旨を次期制度でも踏襲すべき』としているが、現行制度の対象私有林から中小企業以外の企業が所有する森林が除外されていることを継続する旨の記述と考えられる。

森林・林業基本法に定められた森林所有者の責務は共通しており、また、経営規模の拡大や生産性向上が緊急の課題となっている中であり、持続可能な経営を目指す意欲ある事業体の森林はすべてこの制度の対象とされたい。

この場合、必要財源の問題もあることから、経営体の一定面積以上についての交付単価の逓減措置はやむを得ないと考えている。

なお、規模の大小で区別しない施策の投入は、新たな機能区分による森林整備の推進と市町村整備計画の円滑な実施に欠かせないところである。さらに法人などの新規林業参入を図るためにも、より大規模な集約化を図るためにも、規模の大小での差別は避けるべきである。このことは流域での協調した取り組みや地域林業の形成のためにも上可欠である。

3. 項目: Ⅱ 現行の仕組みの評価及び対応方向
3 積算基礎森林
(2) 評価
(3) 対応方向
要望:

『8,9齢級の人工林にかかる交付要件については、環境配慮の要素を加味した見直しが可能か検討すべき』と記述されているが、ぜひ実現していただきたい。

4. 項目: Ⅱ 現行の仕組みの評価及び対応方向
6 市町村の事務
(2) 評価
(3) 対応方向
要望:

『市町村の事務負担が過大とならないよう』、『可能なものは森林組合等への委託についても検討』と記述されているが、既述のとおり、市町村によっては、森林施業計画の作成が委託された森林以外は協定の対象としない事例が見受けられる中で、説明会の開催や協定の作成指導などの事務委託が導入されるならば、これを慫慂、助長することにつながる。かつ、大半の協定当事者でもある組織が現地確認や書類審査を自ら乃至は関係する団体が受託して実施することの例はこれまでにないと思われる。

林業者の直接請求への阻害や公平性等の問題が想定される中でこれを実施するのであれば、生じ得ることに対する見解をあらかじめ明らかにしていただきたい。

また、基本的には、市町村林務行政の執行体制の整備・充実がなされるべきであり、新しい意欲ある森林・林業基本計画の確実な実現のためにもこのことは避けられない課題である。

    
5. 項目: Ⅱ 現行の仕組みの評価及び対応方向
8 交付額の制限
(2) 評価
(3) 対応方向
要望:

『財政事情』での『交付額の制限』や『上在村』等の『一部の森林所有者を除外』して交付する事例も多いが、対応方向で『市町村に十分説明し、交付金制度の一層の普及を図るべき』との既述は具体性に乏しく状況の改善にはつながらない。

各市町村の取組意欲の落差や市町村当局による交付対象者の選別を是正し、制度の公平な運用がなされるよう、具体策の検討をお願いしたい。

6. 項目: Ⅲ 平静19年度以降の新たな対応方向
2 施業・経営の集約化
(2) 対応方向
要望:

『施業・経営の集約化に取り組む者の意欲を高める仕組み』とは、交付金の割り増しと思われるが、これは既述の1に同じ。

また、「施業・経営の集約化に同意して所有林を長期施業委託した森林所有者も交付金制度の効果を実感できる仕組みとする《ことの具体的手法は記述されていないが、仮に、施業委託した者に報奨金的性格の金銭を支払うことであれば、施策の優先順位を十分に検討したうえで実施されるべきと思われる。

7. 項目: Ⅲ 平静19年度以降の新たな対応方向
4 その他
要望:

『多様な森林整備に向けた環境配慮が促進される仕組みが可能かどうか検討する』こととされているが、このことの実現を期待している。 

8. 項目: 『中間とりまとめ』の項目外
要望:

平成17年12月20日付けで要望したこの制度の基本的な見直しである次の件につき、今後の財源確保を含め、更なる検討をしていただきたい。

『長伐期に向けて持続可能な森林経営を奨励する交付金制度へ転換するよう制度の基本的な見直しをして頂きたい。

具体的には、森林経営の自立と環境貢献を高める誘導策として、持続可能な森林管理を約束し一定レベルの経営計画の認定を受けた個人・法人の経営体や経営受託を行う森林組合等を対象にして、現行の交付金の対象作業範囲を森林整備全体に拡大し、森林の内容や施業方法、規模の状況等に応じて、林業経営再生のために必要となる経費を一括して直接支払う交付金方式へ転換をしていただきたい。

このことは、少ないコストで高い効果を実現するための施業技術の開発や経営手法の改善を促進し、経営体の自立性発揮とイノベーションを促すことにもつながる。』

なお、補助金制度の継続によることが望ましい林業者にあっては、この制度による健全な林業の再生のために必要となる支援措置を講じていただきたい。

以上
■ <スギとケヤキの超高齢林>
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