林経協の提言
● 地域材の活用に向けての政策提言
関係者各位
平成15年10月
国産材需要拡大会議

近年の国産材の価格低落は、半面において価格競争力が強化されたことでもあるが、木材需要に占める国産材比率は、2割を下回ったまま上向く気配は見えない。このため、われわれ国産需要拡大会議は、国産材の需要拡大のための課題となっている『地域材活用』を大きく推進するための方策について、平成15年4月以降、数回の検討会を重ね、この度、別紙の報告書をとりまとめた。

今後、地域材の需要拡大に向けて、消費者(住民)との連携の輪を広げながら、地方自治体・国の施策による支援を得つつ、林業から住宅施工に至るまでの関係者が主体的に取り組むことが期待される。

なお、この会議は森林総合研究所の野田英志氏を座長とし、下表の地域材に関心を有する学識経験者や林業・木材産業・流通業の実務者、地方行政担当者等とで構成している。

<国産材需要拡大会議の委員>
氏   名 所   属
野田英志 森林総合研究所林業経営・政策研究領域流通システム担当チーム長
榎本長治 山長林業且ミ長(製材加工、プレカット)
田中克成 静岡県森林組合連合会代表理事・常務
高橋秀夫 ナイス轄蒼燒リ材仕入部担当部長(流通)
長谷川敬 長谷川敬アトリエ主宰(設計)、緑の列島ネットワーク代表理事
長   哲也 日本の杉桧を守る会副会長(林業)
犬伏由利子 消費科学連合会副会長
吉田正木 吉田本家山林部(林業)
酒井   裕 ケト・ジャパン代表(林業)
古河久純 日本林業経営者協会会長、古河林業且ミ長 (林業、住宅施工)
嶋瀬拓也 森林総合研究所林業動向解析研究室
佐藤健一 秋田県農林水産部参事
渡辺久佳 岐阜県農林水産局林業振興室長
田中   明 兵庫県農林水産部木材利用担当主
木下紀善 全国森林組合連合会専務理事 (事務局)
角谷宏二 全国木材組合連合会常務理事 同上
絹川   明 日本林業経営者協会専務理事 同上
(別紙) 地域材の活用に向けて
− 地域材の活用と顔の見える木材での家づくりの推進 −
平成15年10月
国産材需要拡大会議
I.はじめに

緑で覆われた日本の山は、炭酸ガスを固定して清浄な空気を生み出し、水を蓄え洪水を防いで豊かな水を下流に送り届けてきた。またそこで育てられた木材は、下流に住む人々の家づくりに役立てられ、『木の文化』を育んできた。先人たちのたゆまぬ山づくり・家づくりのたまものである。しかし今日、山づくりは危機的状況に陥っている。また家づくりの仕組みも大きく変わり、山づくりと家づくりの結びつきは弱まり、緑で覆われた日本の山を健全に維持していく仕組みが破綻を来しつつある。

山には家づくりに必要な木は育っている。スギ・ヒノキなどの人工林である。それは今日の住宅建築に十分役立つ量がある。しかし木材価格の長期低落もあって、外材との価格差が解消されたにもかかわらず、国産材の需要は低迷したままである。このため、林業経営はいっそう困難となり、伐りたくても伐れない状況の下、木材供給のパイプは細り続けており、このままでは森林の健全な育成も危うい。

一方、川下の消費者は清浄な空気や豊かな水を介して、上流域の森林保全への理解を深めてきた。また家づくりに際しても、地域の木材利用に目を向ける消費者が増えてきた。しかし消費者のこうした意向に応じて、地域材を活用した家づくりを行う仕組みは余りにも弱い。木材輸入大国である日本は、発展途上国の森林破壊を助長しているのではないかとの批判もある中で、『日本の山には木があるのに何故使えないの』との消費者の至極当然な疑問にどう応えたらよいのだろうか。

国産材需要拡大会議は、日本の山づくりと家づくりを再度強固に結びつける上で、地域材の活用と顔の見える木材での家づくりを大きく推進することが、極めて重要と考えている。

地域材の活用は、林業生産活動を通して林業の再生と農山村社会の活性化につながり、同時に良質な森林環境を創造し、国民に提供することにつながる。また、外材と比べて木材輸送に要するエネルギー消費が少ないなどの面から、国民経済や地球環境にも大きな効用がある。さらに消費者にとって、林業経営者や木材供給者と相互に信頼関係を持って地域材を利用し、顔の見える木材での家づくりを進めることは、安心・良質な住宅のストックを増やすとともに、身近な森林を健全に維持することに貢献でき、豊かな山の恵みを享受することにつながる。

このような考えに立って、国産材需要拡大会議は、地域材の活用と顔の見える木材での家づくりを大きく推進するための具体的・実践的方策について議論し検討を進めてきた。

会議では、以下のIIに述べる認識に立ち、IIIに掲げる地域材の活用に向けた推進方策を取りまとめた。会議参加者一同は、関係者の積極的な取り組みと国や地方自治体の施策が相俟って、地域の山づくりと家づくりが結びつき、地域材需要拡大の展望が開けることを期待している。

なお、この会議は森林総合研究所の野田英志氏を座長とし、地域材に関心を有する学識経験者や林業・木材産業・流通業の実務者、地方行政担当者等とで構成し、平成15年4月以降、数回の検討会を経て報告を取りまとめたものである。

II.消費者ニーズに沿う地域材の活用
1. 消費者との信頼関係づくりを

冒頭に述べた考えに立ち、地域材の活用と顔の見える木材での家づくりを推進するために重視すべき点は、消費者(施主=住まい手)と木材の供給者(林業・木材加工流通・住宅設計施工者)とが有機的に繋がる仕組みを再構築することである。その際、地産地消や顔の見える関係などをベースに相互の信頼関係を醸成することが、その実効性を高める上で不可欠である。

この信頼関係に基づいて、地域材を活用した木造住宅(地域材活用住宅)づくりを推進していく必要がある。消費者との間の信頼関係なくして、国内林業・林産業の生き残る道はないし、山づくりに対する国民の支援も期待できない。

2. 消費者の住居に寄せる期待

過去、わが国の文化が『木と紙』の文化と評された時代があった。その最も顕著な事実が住居にあったと言えよう。

しかし、戦後、映像を通して、あるいは実際に見た欧米のどっしりとした石の文化に接し、『木と紙』の文化は『ぺらぺら』の文化と錯覚した。また、狭い土地に、何所帯ものマンションという集合住宅を造るためには、実際のところ、木は最適とは言えなかった。そのため、コンクリートを外壁に貼るような簡易な鉄骨構造が、一戸建ての家にまで進出してきた。

とはいえ、経済が急成長する中で、木造家屋に固執する消費者も多かったが、当時は国産材の供給は需要に追いつかず、外国からの輸入に頼らざるを得なかった。それが『国産材は高い』という観念を消費者に植え付け、今日の『山の荒廃』と言う悪循環を生んでしまった。

近年になって、化石資源などの浪費による地球温暖化・地球の環境劣化が大きな社会問題になってきた。身近にはシックハウス症候群をはじめとする多くの化学物質による健康被害の発生を受け、人々は自然・環境・安全への関心を高めつつある。

消費者は家計の許す限り、家族が憩い、眠りにつける場所として、住居に安全・安心・癒しを求め、その質の向上を願うとともに、環境への配慮も重視するようになってきた。そしてこうした願いは、『住宅の品質確保の促進等に関する法律』(以下、品確法という)の制定や建築基準法の改正により、さらには、『地域材』・『国産材』の活用により、ある程度叶えられるものと期待している。

3. 消費者ニーズと地域材活用

こうした消費者の住居に対する願い(ニーズ)を捉えると、地域材を活用した木造住宅(地域材活用住宅)を消費者との信頼関係の上に造ることは、多くの点で時代の流れに沿うものと考えられる。

その理由としては、

(1) 自然素材であるムクの木材の安全性がある。シックハウスの原因となる揮発性有機化合物の発生源である接着剤などが使用されていないことである。
(2) ムクの木材は、火災時に一酸化炭素を除き有毒ガスを出さないことや、木材は加熱による強度低下が鉄やアルミに比べはるかに遅く、構造材で一定の厚さが確保されれば、燃焼は表面から徐々に進行するものの、内部は燃えないため、耐火性能が長く確保されることである。
(3) 自然素材のもつ癒しの効果も見逃せない。
(4) また、環境面では、木材はカーボンニュートラル(注)な資源であり、非木造住宅に比べ環境負荷が小さく、住宅建築から解体時までの炭素固定機能も評価されていること。
(5) 森林から住宅地までの木材輸送のエネルギー消費を考えると、住宅建築サイトに近い地域材の利用は、より少ない輸送エネルギーで済むという利点がある。
(注) カーボンニュートラル:木材は燃焼・腐朽によって二酸化炭素を発生するが、樹木の成長過程で二酸化炭素を吸収しており、樹木の生長、木材利用、燃焼・腐朽の循環で大気中の二酸化炭素の増減に影響を与えないこと。なお、化石資源の代替として木材を使用することは、炭酸ガス放出を抑制することになる。
4. 地域材活用の課題と推進方策

しかし同時に、消費者と地域材供給者とが相互の信頼関係の下に、地域材活用住宅を造りその輪を大きく広げていくためには、消費者と供給者間の情報アクセス、地域材の安定供給や品質確保、地域材活用住宅のコスト、工期・工法等々、改善しクリアーしなければならない課題は多い。

こうした課題も踏まえて、地域材活用を推進する上で効果的で、問題打開につながると考えられる推進方策について、次の3つの項目に分けて提示する。

III.域材の活用に向けた推進方策
1. 地域材活用住宅の新しい供給の仕組づくりを
(1) 地域の家づくりネットワーク構築への支援

木材の供給者(林業・木材加工流通・住宅設計施工者)が消費者(住まい手)と顔の見える信頼関係で有機的につながるための ― 地域の家づくりネットワークの構築支援 ― を提案する。

『顔の見える木材での家づくり』は全国各地で叢生してきており、林野庁の平成14年調査では144事例、年間5千棟強の供給実績がある。こうした各地での木材供給者と消費者を結んだ顔の見える家づくりネットワークは、個々の規模は小さいものの、山づくり・家づくりの実践を通して、地域の気候風土に適応した在来工法や技術を受け継ぎ、工夫を加えて、多様な『木の文化』を維持し育む上で重要な役割を果たしている。地域材の活用を通して、山づくりと家づくりが結びついた、顔の見える木材での家づくりの『原型』をなすものといえる。

従って、こうした各地の家づくりネットワークを支援しその輪を全国に広げていくことが重要である。しかし立ち上げ段階でのネットワークは概して少人数の有志の輪が中心で、ネットワーク運用の資金に乏しく、また活動を広げていくノウハウ等の情報に乏しい。このため、地域の自治体などによる立ち上げ過程への資金や情報の支援が有効である。

また、こうした各地の多様な活動の経験や情報を共有して、その輪を広げていくため、横の連携を目指したネットワーク化の動きもあり、こうした地域ネットワークへの自治体・関係業界による資金・情報・技術支援が望まれる。林業から住宅施工までの関係者が参加し、顔の見える木材での家づくりに連携して取り組む過程で、地域材活用住宅のコストや工期の縮減を目指した合理化工法の開発や住宅プランの蓄積も図られ、これらを共有し活用することを通して、より広範な消費者との家づくりに発展することも期待できよう。

ただし、現状での地域ネットワークによる顔の見える木材での家づくりは、活動地区が限られ、その数も少ない。そのため広範な消費者をその輪の中に取り込むには至っていない。地域の家づくりネットワークは、消費者との顔の見える信頼関係を深めながら、その輪を着実に広げていく必要があり、中・長期的な取り組みと息の長い支援が必要である。

地域材の短期的・量的な利用拡大を図るためには、地域の家づくりネットワークの構築支援のみでは、十分とはいえない。そこでさらに、地域材利用の量的拡大に向けて、以下の推進方策を提示する。

(2) 地域ビルダーによる地域材活用の促進

熟練した職人を擁する地場の工務店は、地域の木造在来住宅の建設に大きく貢献してきた。しかし今日、一部の地場工務店で、地域の家づくりネットワークなどにより活発な木の家づくりが展開されてはいるものの、他の多くの工務店は、営業力等に優れた大手ハウスメーカーの進出に伴い地盤沈下が進んでおり、その下請化や廃業も増えている。地場工務店の縮小後退の中で、このままでは地域材の量的な利用拡大は期待できない。

このため、営業力やデザイン・設計力を有し、地域材活用に関心を持つ地域ビルダーなど(特に都市部の)にも顔の見える木材での家づくりに積極的な参加を促し、都市部での地域材活用住宅の建築を拡大する仕組みをつくる。 ― 地域ビルダーによる地域材の活用 ― は、地域材の需要を拡大する上での効果が大きい。

地域ビルダーによる地域材の活用を促進するためには、後述(IIIの3)する自治体による地域材活用住宅への税財政等の支援が効果的である。また、地域材を活用し山側との顔の見える関係を確保するため、次((3))に述べる地域材の長期予約売買契約システムの導入や、また自治体支援を担保し、地域材活用の公的認証を得る上で、次項(IIIの2)で述べる地域材の表示システムを並行して導入することが重要である。

なお、全国規模で事業展開している大手ハウスメーカーは、在来の木材流通ルートとは別に、独自の住宅部材の一括仕入れルートを持ち、これまでは地域材の活用が余り期待できなかった。しかし、環境や森林資源循環にも配慮した住宅建設の動きが強まる中で、今後に期待できる。その仕入れルートに地域材を乗せることができれば、需要拡大の効果は大きいが、そのためには新しい地域材供給体制づくりが不可欠であり、今後の取り組み課題である。

(3) 地域材の長期予約売買契約システムの導入とIT化

地域の林業、製材・プレカット加工業と地域ビルダーを、地域材の効率的活用を目指して、安定的に結びつけるためには、山元・加工段階と地域ビルダーとの地域材の安定取引が重要であり、それを支える地域森林資源・原木生産・製材・プレカット加工・住宅施工情報等をリンクさせたIT化の推進が必要である。

森林組合や林業者グループなどの山元側と製材・プレカット加工業、地域ビルダーとの間で、あらかじめ取引量と価格決定・決済方法を取り決める ― 長期予約売買契約システムとIT化 ― は、地域材の計画的・効率的生産に有効な手法であり、林業・素材生産経営や製材加工・ビルダー経営の安定化に資する。

またこの長期予約システムの下、IT化を通して、住宅施工情報をリアルタイムで山元〜加工段階に流すことで、旧来の見込生産方式から実需に対応した受注生産方式に切り替えることができ、歩留まりの向上や在庫圧縮など伐採−加工−流通−施工のトータルでの効率化にも効果が期待できる。

長期予約売買契約システムの下、産地の特定できる地域材活用住宅の供給は、消費者(住まい手)との間で、一定の『顔の見える』関係を確保できよう。

2.地域材表示システムの導入と情報システムの整備を
(1) 木材におけるトレーサビリティの導入

『地域材を家に使うことで健全な山づくりにも関わりたい』との消費者の想いは、次第に広がりつつある。しかし現実には、住宅に使われている地域材の生産地や森林の持続性、健康面での安全性や価格、地域材の活用がどれだけの環境貢献になるのかなどの、消費者に必要と思われる木材や木造住宅の情報表示は不十分なままである。生産地表示については一部の先進的な県で産地証明制度の取り組みが始まった段階である。

このため、木材産地から製品の加工流通過程における地域材の明確な情報表示システム ― 木材におけるトレーサビリティシステム ― (注)の導入・定着に向けて、早急に取り組むことを提案する(国、自治体、消費者団体、関係業界、研究機関等の参画で)。

地域材を使うことが、住いの安全・安心・癒し・環境等の面で優れていることを示す、消費者にもわかる(チェックできる)透明性の高い客観的な評価指標・表示の整備には、例えば次の項目などが考えられる。

1) 木材(製材品)の品質表示はJAS制度で整備が進められているが、樹種・規格・等級・含水率・強度などに加えて、ムク材は接着剤使用の建材よりも自然性の高い素材であることを示すマーク表示の採用などにより、改正建築基準法の規制対象建材との違いを明示化する。また製材メーカーの表示やできれば価格(円/本)などの表示も含め、消費者に分かり易いように、概ね1本毎に情報表示シールを添付する。
2) 木材の産地表示及び、可能な限り当該森林経営の持続可能性の表示。
この場合、都道府県産材認証制度と関連させ、上記のムク材の品質表示と合せて、公的機関が生産履歴を認証することが出来ればその効果は大きい。今後の課題として、森林認証制度と関連させる工夫も必要である。
3) 木材のトレーサビリティをベースとして、木材の産地・加工流通基地と住宅建築サイト間の輸送手段及び輸送距離を評価することにより、環境負荷の少ない家づくりの指標−ウッドマイレージ指標など−を算定する実用的手法を開発し、その普及を図る。消費者への指標提示・評価を通して、消費者・住宅施工者と川上との顔の見える関係を促進する。
4) 地域材活用住宅の推定寿命を基に、解体廃棄までを含めたライフサイクルの簡便な環境影響評価法の開発とそれに基づく環境負荷指標の表示について検討を進める。なお、解体廃棄による炭素放出は、地域材の場合、放出炭素は国内森林で吸収されるが、外材の場合、放出炭素は、地域資源循環の観点からは国内では吸収されず、カーボンニュートラルとはならない。

なお、1)、2)は、従来の木材のわかり難さを払拭し、消費者への情報透明性を高めて、消費者の地域材認知につながる。また3)、4)は地域材の環境負荷面での利点を数値表示でき、消費者にも分かり易い。なお、2)は3)、4)の推計に不可欠な情報であると共に、顔の見える木材での家づくり推進の上でも、重要な情報となる。

以上のような地域材表示システムと関連情報の整備は、消費者と地域材供給者が顔の見える信頼関係で有機的につながるための基礎ツール・インフラの整備である。

(注) トレーサビリティ(traceability追跡可能性) : 木材製品とその情報を追跡し、遡及できること。木材の生産地や生産・加工流通情報を、消費者から生産者まで遡って確認できる。
(2) 情報発信・相談システムの整備

地域の家づくりネットワーク活動に対する積極的な支援の一環として、地域材活用に関心を持つ消費者への ― 情報発信・相談窓口(ブース)の充実・強化 ― を図る。ブースでは地域材活用住宅に関わる諸々の相談に対応できるように、地域材活用住宅に関わるNPOや関係団体などから専門スタッフを集め、建築・資金・部材相談、自治体等の支援施策情報の提供、工務店・設計者紹介、勉強会の企画や現地見学会など各種イベントの案内などがなされ、地域材活用住宅に関わるあらゆる情報、相談が一箇所のブースで対応できる総合情報・相談システムとして機能させる。

また、窓口(ブース)では、国産材価格が実態よりも相当に高く、木造住宅の建築費に占める割合でも実態の2〜3倍であると誤解している消費者に、正しい理解をしてもらうことや、スギが『品確法』の住宅性能表示の劣化の軽減において、上位に評価されていること、木材と鉄・アルミ等無機質資材との製造時における炭素放出量の差異などの環境負荷の数値表示を通して、地域材活用住宅のPR機能をもたせるなど、前述の地域材の表示システムとその関連情報を活かして、豊かな森づくりとリンクした地域材活用住宅の啓蒙活動の場として積極的に活用する。

さらに、スギ・ヒノキなど地域材の新商品情報、木材の耐火性能や腐朽・耐蟻性等に関する研究データ、地域材活用住宅の工法やプラン情報を整備し、建築設計事務所や工務店にも有用な情報の提供を行う。

3.自治体等による地域材活用住宅への支援施策の推進を

上記の地域材活用の推進方策に加えて、自治体等による地域住民(消費者)の地域材活用住宅への税財政等の直接支援は、地域材活用を通して地域の循環型社会・木の文化創出の上でも効果が大きい。

(1) 地域材活用住宅への自治体による支援の現況

木造住宅建設促進に関わる自治体の支援としては、住宅建設資金に対する低利融資や利子補給を24府県が実施し、補助等では14県が実施している(平成15年度林野庁調べ)。県による助成としては例えば、大分県では『安心、健康、環境共生住宅』の普及促進事業として、1戸につき最大55万円の助成をしているが、市町村においても単独事業として補助(町村により上限額は40〜150万円)を行っている。

スギなどの柱材の無償提供は4県で行われているが、市町村でも住宅1戸当たりスギ柱80本の現物支給や学習机を小学校に提供している事例が見られる。

税制面での支援としては、市町村税である固定資産税減免の事例がある。岩手県紫波町では町産木材利用住宅に対して、住宅・宅地の税の軽減を、建設借入資金への利子補給と併せて実施している。町レベルの取り組みとしては推奨すべき事例である。

(2) 地域での特色ある支援策の強化

地域材活用住宅への自治体の支援としては、税財政等による支援をさらに広げていくことが必要である。その際、地域材活用住宅は、地域の主体性と消費者の参加意識を高める形で支援を進めることが望ましく、そのため各地域での特色ある支援策の工夫が重要である。

また、建築物の廃棄の段階までを考えに入れ、長期的視点に立った、環境負荷の少ない地域材活用建築物(住宅含む)への支援も、公共的視点から重要である。さらに地域の居住環境向上の観点から、町並みや景観にも配慮した支援措置を講ずることは、地域の文化創造の点からも重要といえる。こうした点から例えば、

(1) 大都市自治体と上流地域の自治体との協定に基づき、適正管理された森林から生産された木材を使って、都市住民が建てる住宅への大都市自治体による支援。支援への理解を得るため、これまでの水利用の視点とともに、CO2の吸収源(森林)と排出源(建築物)という環境視点を加えて行くことが重要である。
(2) 地域材活用建築物の地域経済の活性化や環境保全に及ぼす効果を、森林資源の活用・保全に伴う地域の雇用創出面や、森林の活用・育成を通じたCO2吸収および近距離輸送による木材輸送エネルギーの削減などの環境負荷低減の側面で評価し、これらに見合う支援。
(3) 伝統的な素材と伝統的な工法で住宅を建築する地域材活用住宅運動は、『町づくり』、『町並み保存』と親和性が高い。このため景観対策や町並み管理に対する取り組みと連携する形での地域材活用住宅への支援。
(4) 地域性豊かなデザインと地域材を使った施設への支援を公的施設だけではなく、店舗・事務所などの商工業施設へも拡大。
は有効である。

さらに、地域材のトレーサビリティや都道府県産材認証制度を活用し、木材産地県が産地や品質を保証するとともに、木材消費都府県での地域材活用住宅に対して、―産地自治体が助成する施策の創設―は都市部での需要拡大効果が高い。

この場合、産地自治体での合意形成のために、林業・製材加工、地場工務店活用による雇用創出効果等を産地住民に具体的に説明して、理解を得る必要がある。

(3) 『地域材活用促進運動』の推進

平成12年5月に『国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律』(グリーン購入法)が制定された。この法律に基づく閣議決定である『環境物品等の調達に関する基本方針』では、環境負荷の少ない物品として、『間伐材等の木材が使用されていること』とされており、限定的な範囲の国産材しか対象となっていない。

循環資源である木材を活用することは、単に環境への負荷が少ないのみならず、積極的に良質な環境を創造することでもあるので、上述の法律による公共部門で調達できる環境物品としての対象範囲を国産材すべてに拡大するほか、グリーン購入法が対象としていない民間においても、趣旨を一般の消費者に理解してもらい、地域材や木質バイオマス利用拡大を図る―地域材活用促進運動―を全国的に展開する取り組みを強化する必要がある。

(4) 関係者の努力と国の支援

都道府県と併せた市町村レベルの取り組みは、地域材活用の推進に極めて有効であるが、支援措置が講じられていない自治体が相当数あるのも現実である。地域材活用は地域関係者と地方自治体が主体的に担うものであり、まず、林業から住宅施工に至るまでの関係者が声をあげ、消費者(住民)との連携の輪を広げながら、地方自治体が支援施策を講じるよう働きかける必要がある。

地方自治体は、木材の消費自治体も含め、地域材活用に係る各種施策の強化と併せ、十分に活用されていない地方財政措置について、補助事業や地方税(固定資産税、不動産取得税、地方消費税など)を活用した取り組みのために、幅広く活用するよう取り組む必要がある。

また、地方自治体の自主的施策を支援するために、一体となって行う国の税制による措置(消費税の減免や住宅取得控除の割り増しなどの地域材活用住宅への『グリーン優遇税制』の創設)は、相乗的な大きな効果が期待できる。

さらに、在来工法やムク材を活用した住宅づくりを推進するために、建築基準法に基づく防火構造材・特殊構造材等の個別認定に要する審査機関の認定経費についての小規模事業体への支援や木造住宅に知見を有する地場工務店・設計事務所の意見をこれまで以上に住宅建築の施策や施工基準づくりに反映するよう要請する。

■ <間伐の状況>
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