林経協の政策提言

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3. 持続可能な森林経営に向けた政策支援

(1)直接所得補償制度の導入
地球温暖化対策の重要性など林業の外部効果が著しく増大していることに鑑み、持続可能な森林経営を確実にするため、林業の外部効果に対する従来の造林補助金等とは異なる新たな補償制度を導入する。「持続可能な森林管理・経営認定制度」を新設し、長伐期化や環境配慮を含め最低限守るべき森林整備ガイドラインを満たした施業計画を持つ意欲ある「認定事業体」に対して直接所得補償を行う。認定事業体は自ら「直接所得補償」の申請とその使途の説明責任を負うものとする。
直接支払いの補償額は、森林育成費用の大きい幼齢林・若齢林と主に管理費用だけの壮齢林を区別し、森林の内容、規模及び施業状況に応じて逓減させる。
 

(2)CO2吸収源のクレジット化
温暖化ガス削減推進のために、「吸収源増進奨励管理システム」を制度化し、国が国際的に約束した温暖化ガスの6%削減と、森林吸収源3.9%の上限枠の達成にむけ、官民上げて取り組む。
本システムの制度は、私有林でカウントしたCO2吸収量相当を評価し、「持続可能な経営」を行なう経営体に対価で還元する。カウントして集まった吸収源の量は、証券化して企業等に売却する。国内森林が吸収したCO2量は、国際的に認められた吸収枠3.9%相当を確保する為、排出量割当の制度が無い現状では、このクレジットを取得した投資家・企業等には、「グリーン減税」による所得税・法人税等の優遇措置を新設する。
森林の吸収量を算定評価する処方としては、森林施業計画制度の発展的改革、あるいは既存の民間の森林認証制度を活用する。
この一連の仕組みの基本は、「持続可能な森林経営」を奨励するものとなることに加え、林業界にとって新たなビジネスチャンスともなり、他産業界から新たな資本流入が期待できる。

 

(3)森林再生ファンドの導入
施業放棄の森林を集めて、その資産相当量をファンド化して、社会貢献・環境貢献に関心の高い企業や投資家に買ってもらい、施業放棄森林の整備に活用する。
企業からの森林整備に提供されたファンド資金は、環境貢献費用として位置づけ、損金処理ができる制度を導入する。また、個人投資家の投資資金については、相続税をゼロとする制度を導入する。

 

(4)グリーン税制の創設
① 国産材利用促進税制の導入
国産材を利用した住宅の住宅取得控除の割り増しや固定資産税減免、また、法人による国産材利用については法人税、さらには消費税の減免など、「国産材利用促進グリーン減税制度」を創設する。
国産材の活用は、国内森林のCO2吸収源を増進し、また循環型社会の形成に寄与する。
② 山林税制の見直し
長伐期は、世代をまたがる森林の育成により実現する。林業の将来展望が見出せない原因のひとつは、森林の成熟までに繰り返される相続税の負担である(相続の度に税金支払いのため伐採される)。持続可能な長伐期経営システムが破壊されない森林税制とするため、上記の認定事業体に対し、ドイツの例に見られる収益還元による評価額の採用又は非課税制度を創設する。
同様に固定資産税について、現行の保安林非課税措置と同様、森林全体に適用する。


(5)公庫等融資金返還猶予緊急対策
森林資源確保を目指した国家的な植林奨励政策に沿い、当時の低利かつ長期の制度融資を受けた林業経営者が、今その返済時期に直面しているが、現下、当時とは裏腹に、他と比較して高金利となった元本と利子の返済に疲弊している。借入金の元本・利子の返済のために、林業者の多くは過剰な伐採をせざるを得ず、持続可能な森林の形態が崩壊しようとしている。
このため、緊急的な融資金返還猶予対策として、第三者機関としての経営評価委員会を設け、「持続可能な林業経営プログラム」(再建再生計画)を審査することにより、①再生可能と見込まれる林業経営体については債務の繰り延べ償還、利子減免などの対策を講じ、また、②再生が難しい林業経営体は、自己責任の受忍に応じた債務処理対策や、健全な経営体や森林再生ファンドへの経営権の移行などの措置を講じ、林業体質の抜本改善を図る。

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